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「ヴェニスの商人」 [映画・DVD]

私が読書に夢中だったのは小学5・6年生の頃で、学校からの帰り道が退屈なので、毎日図書館で本を借りては、読みながら堤防を通って20分程歩き、家に着いても読み続けたものでした。そんな頃に読んで印象的だったこの作品、多分、小・中学生用に分り易く書かれた本だったと思いますが、迫力の有る場面と、理不尽とも思えるセリフにも驚きながら、夢中で読んだ記憶があります。

そんな思い出深い作品、「ヴェニスの商人」が豪華キャストによって映画化され、DVDになっているのを見つけたのは二ヶ月程前の事でした。ちょうど就職先が決まり、引越しを控えていた時期でしたのですぐに見られませんでしたが、その後ずっと観たいと忘れられずにいた作品です。やっと、自分の身辺が落ち着き、その作品をじっくりと鑑賞出来ることになり、期待が大きくなって行きました。

         

舞台は、貿易都市として栄えた16世紀末のヴェニス。アントーニオは、この街で貿易商を営む裕福な紳士。ある日、彼の元に、年下の親友バッサーニオが借金の申し込みにやって来る。ベルモントに住む才色兼備の令嬢ポーシャにプロポーズをするためだ。が、あいにく全財産が海を渡る船の上にあったアントーニオは、自らが保証人となり、バッサーニオにユダヤ人の高利貸しシャイロックを紹介する。そんなふたりにシャイロックが出した条件は、「もしも3カ月の期限までに借金が返せなかったら、アントーニオの肉1ポンドをもらう」というものだった・・・。

シェイクスピアの戯曲「ヴェニスの商人」を、『イル・ポスティーノ』のマイケル・ラドフォード監督が初めて映画化し、麗しき16世紀のヴェニスをスクリーンに再現した作品です。彼は、脚本執筆の過程でヴェニスに移り住む程、この作品情熱を傾け、全ての面でリアルさを追求しました。シェイクスピアのオリジナルのセリフに忠実に、そして映像テクニックを通じて登場人物の内面に肉薄する場面を表現しました。まさに臨場感溢れた世界を作り上げていると言えるでしょう。

ユダヤ人の金貸しシャイロック役に名優アル・パチーノ、そして共演には『キングダム・オブ・ヘブン』のジェレミー・アイアンズと、『スターリングラード』のジョセフ・ファインズを迎えています。アル・パチーノの迫真の演技と、英国を代表する2大スターの競演が見逃せないところです。また、当時のヴェニスを再現すべく、麗しく重厚な背景を見事に表現した映像技術は、風景描写を楽しむだけでも一見の価値がある作品だと思います。

 

洋画を良く観ていると、人種差別や宗教問題がクロースアップされた映画が多いことに驚かされます。この作品は、単純に見れば人肉1ポンドだなんて狂気の沙汰だという事で片付けられてしまいますが、今回のこの作品では、ユダヤ人だという事だけで蔑まれ続け、人間として扱われていないと感じ、人生を不自由な枠の中でしか生きられなかったシャイロックの悲哀、そして愛するただ一人の人間である実の娘にさえ裏切られた悲しさ・絶望感が、とても良く表現されていて、むしろ同情すらしてしまいます。

そして、最後に出てくる結婚を誓った「指輪」を手放してはいけないという「約束」。愛し合う婚約者からの約束を破ってしまうバッサーニオとグラシアーノの二人に対して、裏切ったとはいえ後ろめたさを感じながら暮らし、父から奪った母の形見の指輪を最後まで手放さなかった娘ジェシカが、何とも対照的で考えさせられました。その事実だけでも、何とかして父シャイロックに伝えてあげられたら・・・、そんな風に感じながら堪能した、見応えのある素晴らしい作品でした。

公式サイト: http://www.venice-shonin.net/index.html


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チヨロギ

子どもの頃に読んだ『ヴェニスの商人』って、シャイロックをもっと悪玉として描いていましたよね。勧善懲悪モノのように。
この映画がsaraさんのおっしゃるようにシャイロックに同情的なのは、それだけ現代の民族/宗教問題の深刻さを物語っているのかもしれません。
でも、こうして時代ごとの解釈ができる懐の深さが、シェイクスピア作品のすごいところだと思うんですよね。
いい映画を教えてくださって、ありがとうございます(^.^)
ところで、saraさんのブログ、印象が変わりましたね。ペットも増えたし、天気予報はあるし。にぎやかで楽しいです♪
うちのほうは明日、晴れのち曇りと出てました。saraさんのおうちのほうは?
by チヨロギ (2006-11-26 00:16) 

fam

ベニスの商人は子供の頃は恐い話に感じました、
大人になって俳優座か文学座の新劇で観た記憶がありますが、友情と約束と取りたて行為の厳しさがあのシーンばかり蘇ります。
当時のベニス風景衣装などに興味が有ります。
ベニスというと又行って今どんなになっているか、見てみたい、おいしいものを食べたい、カフェ、ファッション...
行って楽しみたいです。
by fam (2006-11-26 12:36) 

sara

◇チヨロギさん、早速のnice! とコメントを有難うございます。(^-^)
そうですよね! シャイロックは極悪非道の人物がごとくに書かれていたと思います。こんな事をしてはいけないという見本でしたよね。
この映画ではシャイロックの心情が良く描かれていると思います。
それでも、同情出来るか出来ないか、観る方によって変わってしまうのかもしれませんが、それは自分の経験や感じ方によるのかもしれませんね。皆さんのご意見を伺いたいような映画でした。
さて、最近「ブログパーツ」が気になりだして(笑)、皆さんに楽しんでいただけたらと、あれこれ設置してみました。今日は「3つの占い」が登場! 昨日と今日で、偶然にも同じカード、同じ石を選んでました☆ (^.^)
そして、お天気はズバリ晴れでしたが、これからくもりになる予報です。
by sara (2006-11-26 13:32) 

sara

◇famさん、物語としての「ベニスの商人」は怖い・暗いイメージですよね、まして子供の頃に読んだものは。それでも、子供用に出されたのは、悪い事はしてはいけない、約束は守らないといけない、と解くためだったのだろうと思います。
原作をしっかりと読んでみたいという気持ちになりました。読んだ時期でも、受け取り方が違うのが読書ですものね☆
日本では、徳川幕府が誕生する直前ですが、ベニスは進んでいたようなイメージが有ります。衣装も素敵ですし、興味深いですね。
他の映画では、水の都ベニスとして描かれていて、素敵な所だと思います。一度観光旅行に行ってみたいですよね~♪ (^-^)
by sara (2006-11-26 13:42) 

柴犬陸

「ヴェニスの商人」って、有名中の有名だから、よく知ってるつもりでいました。
でも、今回のsaraさんの記事で初めて知ったことばかりです。
他の小説もなんだか心もとなくなりました。
by 柴犬陸 (2006-11-26 22:59) 

sara

◇柴犬陸さん、この監督はヴェニスの美しさと共に、人間の多角的な部分を浮き彫りにし、映画として完成させたかった様に思います。
シェイクスピアを良くご存知の柴犬陸さんに、そのようにコメントいただいて恐縮です。それでも、これはひとつの解釈なのだと思いますが、極悪非道と思える人間にも、親としての思いや人間らしく生きたいと思う気持ちは有るのだし、屈折した心になった原因にも頷けるものが有ると知りました。
小説って、大人になると解釈が変わると良く言われますが、今の自分として、また多くの小説と向き合ってみたいと思いました。
by sara (2006-11-26 23:13) 

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